この照らす日月の下は……
23
アマノハシダテに来るのは初めてではない。だが、以前とはあれこれ変わっているような気がするのは錯覚ではないだろう。
「あれこれと新しく拡張したからな」
周囲を見回していたキラの様子から推測したのか。ミナがそう教えてくれる。
「すごいです」
「だろう?」
キラの言葉に彼女は満足そうに目を細めた。
「しかし、良く来たの。邪魔は入らなかったか?」
ハルマ殿とか、と彼女はそう付け加える。
「パパもママも『気をつけて行ってらっしゃい』って言ってくれました」
それにキラはこう言い返す。
「最後までごねていたのは他人だな」
カナードがそうつぶやく。
「ふふふ。キラは人気者だの」
言葉と共に彼女はキラの身体を抱き上げた。
「だが、しばしの間、我らが独占させてもらおう」
言葉と共に頬を寄せられる。
「ここには俺たちしかいないもんな」
「そういうことだ。ただし、最優先はラウかの」
今後のことを考えれば、とミナはつぶやく。
「まぁ、それについては後で相談すれば良い。時間は十分あるからの」
さて、移動するか。そのつぶやきと共にミナは床を蹴る。
「ほわっ!」
わかってはいても、ふわりと浮く感覚にはまだなれない。
「すまんな。デッキは低重力の方が色々と都合が良いのだよ」
居住区にはちゃんと重力が設定されている、と彼女は続けた。
「びっくりしただけです」
「そうか」
「キラはあまり低重力を経験したことがないから、仕方がないのでは? でも、覚えれば楽しいぞ」
カナードがそう言って笑う。
「ふむ。そうだな。ここでは危ないがレクリエーション区画の方であればかまわないか」
カナード達もあれこれ教えられるだろうし、とミナはうなずく。
「時間つぶしと体力作りにはちょうど良かろう」
かまわないな、と彼女は腕の中のキラに問いかけてくる。
「覚えれば、兄さん達と一緒に遊べるよね?」
自分の体力では彼等について行くことは難しい。だが、それは重力があるからではないか。それならば、低重力であればもう少し自由に動けるような気がする。そう考えてミナに問いかけた。
「もちろんだ」
だが、答えはのはカナードである。
「休みが終わった後に自慢できる程度にはあれこれ出来るようになろうな」
「そうだな。それが良かろう」
彼の言葉にミナもうなずく。
「あぁ、待ちきれなかったようだの」
さらに彼女は言葉を重ねた。
「姉上! 人に仕事を押しつけて自分だけキラを出迎えるとは、ずるいであろう」
ギナがまっすぐにこちらに近づきながら文句を投げつけてくる。
「何を言っておる。あれは本来お前の仕事よ。お前が放り出していたから、私がしていたまでのこと。それを本来の役目に戻したまでだが?」
それ以上のことをキラの前で言ってほしいか、と彼女は逆に問いかけた。
「……後で良い」
何故かそれだけでギナは矛先を納める。
「そうか。では、まずはキラを部屋に案内しようかの。それからゆっくりと話をすれば良かろう」
その言葉にギナもカナードも首を縦に振っていた。